労災事故~通勤災害・交通事故【弁護士が解説】

業務中の交通事故や通勤中の交通事故に遭った場合には、交通事故の加害者の自賠責保険・任意保険のほかにも、労災保険の適用を受けることができます。

(参考)厚生労働省
    職場の安全サイト 事故の型別災害発生状況
    北海道労働局サイト 北海道の労働災害統計

1.交通事故で労災保険を使用するメリット

1-1.治療費などについて過失相殺をされない

交通事故において被害者にも過失があった場合には、基本的には、過失割合に応じた分の治療費などは、被害者が自分で負担しなければなりません。

例えば、過失割合が加害者80:被害者20の場合、治療費100万円のうち、20万円は自己負担となってしまいます。

仮に加害者の任保険会社が治療費を一括払い(病院へ直接支払う対応のこと)していた場合には、20万円は「払い過ぎ」となり、その分、他の損害項目(慰謝料)から削られてしまいます。

最終的な受取額から20万円を引かれてしまうということです。

しかし、労災保険を適用して、治療費を労災保険からの支払としておくと、結論として、上記のような「治療費の払い過ぎによる最終受取額の目減り」ということはおきません。

このように、最終的に受領できる金額が増える可能性があるという点は、労災保険を適用するメリットです。

1-2.特別支給金を受け取ることができる

事故により仕事を休まざるを得ない場合、もちろん、加害者の自賠責保険や任意保険からも休業損害への支払いがあります。

他方、労災保険を使用する場合には、4日以上休む場合には、休業(補償)給付の他に休業特別支給金が支給されます。

休業(補償)給付は給付基礎日額の6割の金額、休業特別支給金は2割の金額となります。

二つを合わせると8割分の金額となります。

労災保険を使用する場合でも、交通事故加害者の責任が消えるわけではありませんので、全額に足りない部分の賠償は加害者(保険会社)からなされます。

このとき「全額に足りない部分」とは「4割」額なのです。2割額ではありません。

というのは、休業特別支給金(2割)は、いわば労災保険が被災者に「特別に支給する給付金」という扱いで、既払金として控除されないのです。

結果的に被害者は2割分を多く受け取ることができるのです。

この点は、労災保険を適用する明らかなメリットです。

1-3.後遺障害の等級認定を労災保険が行う

交通事故によって負った怪我が完全に治らず、後遺障害が残った場合、自賠責保険にて後遺障害の等級認定が行われます。

他方、労災や通勤災害によって負った怪我の後遺障害認定は、労災保険にて行われます。

つまり、交通事故型の労災や通勤災害の場合、後遺障害の認定手続が重複し得るのです。

そして、後遺障害等級の認定方法は、自賠責保険と労災保険とではやや異なります。

自賠責保険の場合は基本的に書面審査のみですが、労災保険の場合には労働基準監督署での被害者面談も行われ、労災保険の方が主治医等の医学的知見をより尊重する傾向にあります。

その結果、後遺障害該当性の判断が分かれることもあり、労災保険では等級が認められたものの、自賠責保険では認められないというケースが見られることもあります。

労災保険の方が事故被害者にとって、有利な認定判断がなされる傾向が多いように思われます。

特に昨今、自賠責保険は、痛みやしびれ等の神経症状(14級9号、12級13号)の後遺障害を容易に認めない傾向が強く、この点は交通事故被害者を非常に悩ませている点です。

そのため、労災型・通勤災害型の交通事故の場合、労災保険を使用することで、後遺障害認定でより有利の結果を得られる可能性があり、この点も労災保険を適用するメリットです。

2.加害者に対する損害賠償請求

交通事故について労災保険を使用し、労災保険からの補償を受けたとしても、被害者が被った損害の全てが得られるわけではありません。

労災保険からは、怪我の慰謝料(入院・通院の慰謝料)も後遺障害の慰謝料も支給されませんし、後遺障害が残った場合の逸失利益の完全な賠償もありません。

このような慰謝料や完全な逸失利益の賠償などは、加害者(保険会社)に対して、求めるべきものです。

示談交渉や、交渉がまとまらなければ裁判所での訴訟等によって解決を図るべきものです。

当事務所では、労災事故のみならず、労災型ではない交通事故も得意分野としておりますので、被害に遭われた方はぜひご相談をご検討ください。

当事務所の総合サイトもご覧いただければ有用な情報に接していただけるものと思います。

3.当事務所にご依頼いただいた解決例

当事務所にご依頼いただき、解決した通勤災害・交通事故事例です。

解決事例はその他にも多数ありますので、詳細は「解決事例」をご参照ください。

(事故内容)
依頼者(50代男性)は自家用車での通勤中、一方通行道路を逆走してきた車に衝突され、頚椎骨折、外傷性頚椎神経根損傷等の傷害を負いました。

依頼者は、頚部の機能障害について「せき柱に運動障害を残すもの」として後遺障害等級8級の2の等級認定を受けました。

(依頼の経緯)
労災(通勤災害)であると同時に交通事故事案であったことから、事故後から、加害者が契約していた任意保険会社の担当者が対応していました。

労災としては、8級の2の後遺障害等級が認定されましたが、事故(自賠責保険)の方では、12級13号(局部の頑固な神経症状)しか認定されず、せき柱の運動障害は認められていませんでした。

そのため、保険会社からは、労災保険からの給付金の他には、700万円のみの示談額が提示されているという状況でした。
そこで、依頼者は当事務所にご相談、ご依頼をされました。

(弁護活動)
労災と自賠責保険の認定後遺障害等級が異なる以上、保険会社と交渉しても実質的な意味はないので、訴訟提起した上、裁判所での解決を目指しました。

訴訟での争点は、依頼者の負った後遺障害の等級は8級相当か、12級相当かということでした。

双方の主張立証の結果、裁判所は当方の主張を認め、後遺障害等級8級を前提とする和解案が提示され、双方が受け入れ、和解が成立しました。

(結果)
最終的に、労災保険給付金の他に、依頼者は加害者(保険会社)から、約3100万円の支払を受けることができました。

4.早めの相談・依頼で安心を

労働災害の補償やその手続きは複雑で、一般の方が理解しづらいとお感じになる部分も少なくありません。

また、ご自身で会社と交渉することは大きなストレスとなりますし、どんな責任をどの程度追及できるどうかについても、判断は容易ではありません。

弁護士にご依頼いただくことで、会社側に責任があるのかどうかをより正確に判断し、会社側と対等に交渉することが可能です。

また、「弁護士に依頼するかについては未定」という方も、お早めにご相談いただくことで、弁護士はその方の具体的な事情を踏まえたアドバイスができますので、ご不安の解消や、今後の方針を立てるお役に立つことでしょう。

労災事故に遭われて、お悩みの方はぜひ一度、ご相談なさってみてください。
ご相談は、電話でもメールでもLINEでも可能で、いずれも無料です。ご相談はこちらです。

関連するページ