労災事故~転倒事故【弁護士が解説】
労働の現場で、物や段差につまずいたり、足を滑らせて転倒し、けがを負うケースが少なくありません。
また、転倒事故は特定の業種に限らず、広くみられる事故態様です。
転倒事故の場合、床や地面についた手を骨折したり、足を捻挫・骨折する、腰や頭を強く打つなど、業務への復帰まで時間を要したり、後遺障害が残って生活に支障をきたすこともあり、被害が大きいことも少なくありません。
(参考)厚生労働省
職場の安全サイト 事故の型別災害発生状況
北海道労働局サイト 北海道の労働災害統計
1 会社、元請けに対する損害賠償が可能なケースも
被害が大きいこともあり、労災保険給付で相応の補償(数百万円)がなされることも少なくありません。
また、労働現場の管理責任について「安全配慮義務違反(労働者が安全で健康に働くことができるように配慮する義務)」や「不法行為責任(事故の原因が企業の活動そのものを原因とするような場合や、労働現場の建物・設備に危険があった場合などに認められる責任)」などを根拠として勤務先会社や元請に対して多額の損害賠償請求が認められるケースも比較的多くあるのです。
しかしながら、このことを知らずに、労災保険からの給付のみを受け取って「一件落着」と考えて終えてしまっている被害者の方が多いのもまた事実です。
2 会社・元請けに対して過失を追求するために
労災事故においては様々な角度から「事業主は事故を起こさないために全力で労働者の安全に配慮したのか」という検証が行われます。
転倒事故が発生したとなれば、例えば下記のような点で、会社・元請けの過失が検証・追及されることになります。
・「滑る」-水や油が残っていたなど床が滑りやすくなっていなかったか
・「つまずく」-床に凹凸や段差があるとか、放置された商品があるなど、つまずきやすくなっていなかったか
・「踏み外す」-荷物を抱えて階段を下りるときや暗いときなど、足元が見えづらく、足を踏み外しやすくなっていなかったか
・危険な箇所があった場合、転倒を防止するため、十分な安全教育や、危険場所にステッカーを掲示するなど危険の「見える化」はなされていたか
しかしながら、一個人である労働災害に遭われた被災労働者が、独力で会社や保険会社とやりとりをするのは困難を極めます。
また、事故態様に関する資料の収集も容易ではありません。
ほとんどの方が労働災害に遭うこと自体初めての経験ですから、ご自身ではよく分からないことが多く、どのように交渉を進めればよいか悩ましく、お忙しい中で非常にストレスに感じられることと思います。
また、会社側も「そもそも労働者(=あなた)の不注意による事故であり、会社に責任はない」、「労働者に大きな過失があった」というように、「安全配慮義務違反がない」と主張したり、仮に会社の責任を認めても「過失相殺(割合)」で大幅減額などの主張をしてくる場合が少なくありません。
そのような時にも、弁護士はあなたの味方となり、適切な主張を行います。
弁護士は、労働災害の賠償についても熟知しており、こういった複雑・煩雑なやりとり、具体的な証拠の収集、事実認定を経た上での法的主張なやり取りは日常的に行う業務としてよくなれていますから、ご依頼いただくことでこれらを一挙に担い、有利に、スピーディーに進めることができます。
転倒事故に遭われた方やご遺族の方は、ぜひ一度ご相談ください。
3 当事務所にご依頼いただいた解決例
当事務所にご依頼いただき、解決したひかれた・激突事故事例です。
解決事例はその他にも多数ありますので、詳細は「解決事例」をご参照ください。
(事故内容)
依頼者(40代男性)は、物流会社に勤務し、配送車両(トレーラー)から荷卸しをする業務に従事していました。荷卸し作業中、トレーラー内の段差から転落し、床面についた手首を骨折する労災事故に遭いました。
依頼者は約2年間に渡って治療を続けましたが、手首の可動域制限や痛みといった後遺症状が残ってしまい、労基署から12級の障害等級の認定を受けました。
(依頼の経緯)
依頼者は労基署から12級の等級認定を受けて労災給付金を受給しましたが、会社からは他に何の補償もない状況でした。会社としては、依頼者が転んで落ちただけで会社には何の落ち度もないという態度でした。
しかし、依頼者の労災事故は、荷物をもって段差を降りなければならなかった作業環境に問題がある、上司が安全面を顧みずにとにかく作業員に作業を急がせた、ヘルメットの着用等の安全管理体制に不備があった等の結果、起きたものであり、会社に責任を問い得ると思われるものでした。
そのため、依頼者は当事務所にご相談、ご依頼をされました。
(弁護活動)
会社に対して、事故の原因は会社の安全配慮義務違反(適切な用具の手配、適切な作業方法の指示の懈怠)にあるとして、損害賠償請求を行いました。損害賠償の内容は、休業損害、通院慰謝料、後遺障害による逸失利益、後遺障害慰謝料等です。
そうしたところ、会社にも代理人弁護士がつき、交渉となりました。
会社は、事故態様や安全管理体制を争う旨の主張をしてきましたが、結論として、依頼者の過失割合を50%とした上で補償金を支払う旨の回答をしてきました。
当方にとって、会社が一定の支払義務を前提とした回答をしてきたことは評価できるものでしたが、50%もの過失相殺は受け入れられませんでした。そこで、再度、当方から、各証拠等に基づいて本来の事故態様を指摘し、事故後も会社は不十分な安全管理体制であった旨を認めていたこと等を指摘しました。
その上で、(本来は依頼者に過失はないというのが基本主張ですが、)訴訟となると相当に長期化することもあり、当方も一定の金額的譲歩を受け入れる内容の提案をしました。具体的には当方請求額から約15%程度の減額提案です。これは会社も任意示談解決を望んでいる雰囲気であったことも考慮して行ったものでした。
そうしたところ、会社は当方の提案に応じ、当方の提案内容で任意示談解決をすることとなりました。
(結果)
これまでの労災保険給付(約450万円)の他に、依頼者は会社から800万円弱の解決金を得ました。
本事案の特筆点はスピード解決であり、当事務所へのご依頼から約3か月で解決しました。また、必ずしも会社の責任を示す動かぬ証拠があるわけではないという状況の下であり、依頼者にとっては非常によい結果となったと事案でした。
4 早めの相談・依頼で安心を
労働災害の補償やその手続きは複雑で、一般の方が理解しづらいとお感じになる部分も少なくありません。
また、ご自身で会社と交渉することは大きなストレスとなりますし、どんな責任をどの程度追及できるどうかについても、判断は容易ではありません。
弁護士にご依頼いただくことで、会社側に責任があるのかどうかをより正確に判断し、会社側と対等に交渉することが可能です。
また、「弁護士に依頼するかについては未定」という方も、お早めにご相談いただくことで、弁護士はその方の具体的な事情を踏まえたアドバイスができますので、ご不安の解消や、今後の方針を立てるお役に立つことでしょう。
労災事故に遭われて、お悩みの方はぜひ一度、ご相談なさってみてください。
ご相談は、電話でもメールでもLINEでも可能で、いずれも無料です。ご相談はこちらです。