労災事故~ひかれた・激突事故【弁護士が解説】

たくさんの業種や現場において、重機や車両にひかれる労災事故、人と機械・物とが激突する労災事故が発生しています。

例えば、作業中のトラックやダンプ、フォークリフトに労働者がひかれる、重機が倒れて労働者が下敷きになる、クレーンの吊り荷や伐採木が労働者に激突するなどです。

重量物である機械や荷物などが人体に衝突する事故ですから、必然的に怪我の程度も深刻なものとなることが多く、重度の後遺障害が残ったり、お亡くなりになったりするケースも多々あります。

(参考)厚生労働省
    職場の安全サイト 事故の型別災害発生状況
    北海道労働局サイト 北海道の労働災害統計

1 会社、元請けに対する損害賠償が可能なケースも

重篤な後遺障害を負ったり、お亡くなりになることが多いこの「ひかれた・激突事故」では、労災保険給付で相応の補償(数百万円から数千万円)がなされることが少なくありません。

また、労働現場の管理責任について「安全配慮義務違反(労働者が安全で健康に働くことができるように配慮する義務)」や「不法行為責任(事故の原因が企業の活動そのものを原因とするような場合や、労働現場の建物・設備に危険があった場合などに認められる責任)」などを根拠として勤務先会社・元請に対して多額の損害賠償請求が認められるケースも多くあるのです。

特にこの「ひかれた・激突事故」の場合で、会社に一切の過失がないケースというのは、むしろ相当に珍しいといえ、ほとんどの場合、会社には何がしかの注意義務違反や不法行為責任を負うといってよいと思われます。

しかしながら、このことを知らずに、労災保険からの給付のみを受け取って「一件落着」と考えて終えてしまっている被害者の方が多いのもまた事実です。

重篤な被害に遭ってしまっている以上、正当な補償・賠償を受けるべきです。

2 他の従業員の失敗・過失により怪我を負った賠償はどうなる?

「同じ現場で作業していた方の運転ミス、操作ミス、安全確認の懈怠によって、ひかれた・激突事故が発生した」というケースはとても多くあります。

このような場合、責任は誰にあるのでしょうか。

もちろん、ミスをしてしまった本人に落ち度はあり、損害賠償責任はあります(不法行為、民法709条)。

さらに、従業員が業務の執行につき行った不法行為による責任は、その従業員のみならず、雇用主である会社も負います。これを「使用者責任」(民法715条)と呼び、会社に対して損害賠償を行う際の根拠となります。

この場合、ミスをしてしまった加害者個人の責任と会社の責任は両立し、ほとんどの場合、会社が現実に支払うことになります。

3 会社・元請けに対して過失を追求するために

労災事故においては様々な角度から「事業主は事故を起こさないために全力で労働者の安全に配慮したのか」という検証が行われます。

「ひかれた・激突事故」が発生したとなれば、例えば下記のような点で、会社・元請けの過失が検証・追及されることになります。

・立入禁止区域の設定、安全のために必要な指示の徹底など安全対策は不足なくなされていたか
・運転、操作免許・資格を持っていない者に運転・操作をさせていなかったか
・機械を操作する者、周囲で従事する者への十分な安全教育がなされていたか
・安全確保のための監視員の配置などは十分になされていたか

しかしながら、一個人である労働災害に遭われた被災労働者が、独力で会社や保険会社とやりとりをするのは困難を極めます。

また、事故態様に関する資料の収集も容易ではありません。

ほとんどの方が労働災害に遭うこと自体初めての経験ですから、ご自身ではよく分からないことが多く、どのように交渉を進めればよいか悩ましく、お忙しい中で非常にストレスに感じられることと思います。

また、会社側も「そもそも労働者(=あなた)の不注意による事故であり、会社に責任はない」、「労働者に大きな過失があった」というように、「安全配慮義務違反がない」と主張したり、仮に会社の責任を認めても「過失相殺(割合)」で大幅減額などの主張をしてくる場合が少なくありません。

そのような時にも、弁護士はあなたの味方となり、適切な主張を行います。

弁護士は、労働災害の賠償についても熟知しており、こういった複雑・煩雑なやりとり、具体的な証拠の収集、事実認定を経た上での法的主張なやり取りは日常的に行う業務としてよくなれていますから、ご依頼いただくことでこれらを一挙に担い、有利に、スピーディーに進めることができます。

「ひかれた・激突事故」に遭われた方やご遺族の方は、ぜひ一度ご相談ください。

4 当事務所にご依頼いただいた解決例

当事務所にご依頼いただき、解決したひかれた・激突事故事例です。

解決事例はその他にも多数ありますので、詳細は「解決事例」をご参照ください。

(事故内容)

依頼者(30代男性)は自動車関係の職場に勤務していましたが、業務中に同僚が自動車の操作を誤り、依頼者は膝等を負傷する事故被害に遭いました。

身体的負傷の治療は9か月ほど続けましたが、膝の神経症状が残り、これについては自賠責保険にて14級の後遺障害が認定され、その後、加害者の保険会社と示談に至りました。

しかし、その後も、事故のショック(事故状況が「危うく死ぬ、重傷を負うような出来事」ほどの態様でした)で、依頼者は精神面に抑うつ症状を来してしまい、これはなかなか回復しませんでした。これは後に心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されました。

(依頼の経緯)

依頼者は身体的負傷の症状固定以降、5年間以上も精神症状に苦しみ、労災保険による治療(精神科)を受けてきました。その間、労災保険からの休業補償給付も継続していました。

会社から特に何の補償の申し出もない状況であり、現状に疑問をもった依頼者は当事務所にご相談、ご依頼をされました。

(弁護活動)

依頼者のお話を伺い、まずは現在の病院で症状固定と主治医が判断するまで治療を継続してもらいました。

また労働局(労基署が所属する官庁)から、膨大な労災関係書類(精神疾患の業務起因性判断のための調査資料一式、障害等級認定のための調査資料一式など)を取り寄せ、事故による身体的負傷の関係の賠償関係書類(当時依頼していた弁護士からの取寄せ資料)をも取り寄せました。

そうした中、依頼者は症状固定となり、労基署に障害給付請求(障害等級申請のこと)をした結果、12級の12の等級認定となりました。非器質性精神障害(9級、12級、14級)で12級というのは相当に重い等級です。

等級も確定したので、勤務先会社に損害賠償請求を行いました。

業務中の従業員による加害事故ですから、会社は使用者としての責任(民法715条)があり、また安全配慮義務違反もあると判断されました。

損害賠償の内容は、通院慰謝料、休業損害、後遺障害による逸失利益、後遺障害慰謝料等で、1500万円超の請求となりました。

そうしたところ、職場にも代理人弁護士がつき、交渉となりました。

会社は、身体的負傷の示談で解決済みである、時効消滅している、症状と事故との因果関係がない、素因減額をすべき、等々いろいろなことを主張してきました。

しかし、いずれも詳細に反論した結果、会社は完全に責任を認めるに至り、任意和解による解決とすることができました。

(結果)

これまでの労災保険からの給付(障害補償、休業補償等で1000万円以上)とは別に会社が約1100万円を支払うという形で和解となりました。

身体的負傷の示談は相当以前に終わってしまっていたこと、最終的に残った精神症状と事故の関係はいろいろと難しい争点もあったことも考えますと、非常に良い解決となったと思われます。

また、精神疾患の場合には、会社に適切に責任を取ってもらったという形で、被災者に及ぼす納得感はとても大きいものがあります。

この件の依頼者にとっても、まさにそうでした。事件処理を進めていく中で、依頼者の精神状態はずいぶん快方に向かっていったなと、接していた弁護士として、私は思いました。

5 早めの相談・依頼で安心を

労働災害の補償やその手続きは複雑で、一般の方が理解しづらいとお感じになる部分も少なくありません。
また、ご自身で会社と交渉することは大きなストレスとなりますし、どんな責任をどの程度追及できるどうかについても、判断は容易ではありません。

弁護士にご依頼いただくことで、会社側に責任があるのかどうかをより正確に判断し、会社側と対等に交渉することが可能です。

また、「弁護士に依頼するかについては未定」という方も、お早めにご相談いただくことで、弁護士はその方の具体的な事情を踏まえたアドバイスができますので、ご不安の解消や、今後の方針を立てるお役に立つことでしょう。

労災事故に遭われて、お悩みの方はぜひ一度、ご相談なさってみてください。
ご相談は、電話でもメールでもLINEでも可能で、いずれも無料です。ご相談はこちらです。

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