製造業における工場等での労災事故に遭ったときの請求について解説

仕事中の業務での怪我・病気である労災(労働災害)には、業種によって顕著な特徴があります。
製造業は、労災の発生件数が全業種の中で最も多く、機械を使うという特色から重大事故が起きやすい業種です。
本記事では、製造業における工場等での労災事故に遭ったときにできる請求について解説します。

製造業の労災の特徴

製造業は、何を製造するかにもよりますが、機械を使うことが非常に多い職種で、危険がそれだけ多いといえます。
そのため、製造業における労災事故(休業4日以上)は全業種の中でもっとも多く、全産業の労災の約20%が製造業で発生しています。

全産業

132,355件

製造業

26,694件

建設業

14,539件

陸上貨物運送事業

16,580件

「令和4年 労働災害発生状況(厚生労働省労働基準局)」より

労災事故の類型としても、機械に挟まれる・巻き込まれることが原因の事故がもっとも多く、約23%にあたる6,146件にものぼります。
手や足など仕事に直結するところを怪我することが多く、休業が必要となることが多くなります。

また、機械力を身体に受けてしまう結果、重篤な怪我となることも多く、そのために後遺障害が残ってしまうことが多いため、適切な補償を受けることが重要になるといえます。

 

製造業の労災でよく問題となること

製造業の労災でよく問題となることを知っておきましょう。

会社の安全配慮義務違反が問題になることが多い

製造業の労災でよく問題になることとしては、会社の安全配慮義務違反が問題になることが多い点です。

会社は、労働者に対して労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務があります(安全配慮義務:労働契約法5条)
この義務に違反して労働者が怪我をした場合は、債務不履行として会社に対して損害賠償請求をすることができます。

製造業では様々な機械を使用することが多く、その多くは適切に使用しなければ重大な事故につながるものです。
そのため、法令(労働安全衛生法及び安全衛生規則等)では様々な規定を設けて、安全対策や安全教育を適切に行うよう規制しています。
しかし、実際には機械の不備・故障や、安全対策・安全教育の不備・不測等のために、多くの労災事故が起こってしまっています。
このような場合には、安全配慮義務違反として、会社に対して損害賠償請求をすることができます。

また、他の従業員の行為によって労災事故が発生したという場合にも、会社に責任が認められ、会社に損害賠償請求をすることができます。

派遣が関係することが多い

製造業の場合、現場工場などで実際に作業している従業員は、派遣労働者であることが多くあります。
派遣労働者については長期の就労が見込めないため、安全衛生教育が不十分であることも多く、そのことから発生する労災事故も多いのが実情です。

労災事故が発生した場合、業務上の災害ですから、原因がどうであれ、労災保険の適用対象となり、労災保険から治療費や休業補償の給付が受けられ、後遺障害が残った場合には障害等級に応じた年金や一時金の給付が受けられます。

さらに、事故の原因が会社の安全対策の不備や、安全教育の不足に起因する場合、他の従業員のミスによる場合などには、会社は、被災労働者に対する損害賠償責任を負いますので、被災労働者は会社(事業主)に請求することで、慰謝料等を受けられます。

派遣先と派遣元のどちらが損害賠償責任を負うかですが、基本的には、作業現場をコントロールし安全管理に責任を負っているのは派遣先ですから、派遣先が責任を負うことになります。
安全配慮義務は直接の雇用関係がある場合に限られず、派遣先と派遣労働者の間にも認められ得るのです。

ただし、派遣元としても、派遣社員に対して必要な安全教育をしていなかった、派遣先で危険な作業が行われていることを知っていた、容易に知ることができた等の事情があれば、派遣元も責任を負うことになるでしょう。

 

製造業において労災事故に遭った場合には弁護士への相談を

製造業で労災事故に遭った場合には弁護士に相談することをお勧めします。
その理由としては次のようなものがあります。

どのような請求が可能かの判断ができる

どのような請求が可能かを知ることができます。
たとえば、労災に被災したにもかかわらず、労災隠しに遭っている場合に、労災保険の給付を請求できるのかの判断ができます。
また、会社(派遣先、派遣元)に対して安全配慮義務違反についての追及が可能かの判断ができます。

会社との交渉や法的手続きを任せる

弁護士に依頼すれば、会社との交渉や法的手続を任せることが可能です。
労働者が一人で会社と交渉するのは、立場や知識などから極めて不利であり、適切な補償を受けられなくなる可能性があります。
また、訴訟等の法的手続を自ら行うのは非常に困難です。
弁護士に依頼すれば、これらを任せることができます。

後遺障害等級認定のサポート

労災で負った怪我が重い場合、後遺障害が残ることがあります。
後遺障害が残った場合、労働基準監督署にて、その重症度に応じて第1級から第14級に分けられた等級に認定してもらい、その等級に応じた補償を受けることになります。
弁護士に依頼すれば、後遺障害の等級認定のサポートもすることができるので、労災保険で不利益を受けることもなくなります。
より重い等級での認定を勝ち取ることは、その後に会社へ損害賠償請求をするに際しても決定的に重要なことです。

弁護士に依頼すればこれらのサポートを受けることができます。

 

まとめ

本記事では、製造業における工場等での労災事故に関する補償等についてお伝えしました。
機械を使うという特性から、労災が非常に多い業種である製造業では、労災認定をされても十分に損害の補填ができない可能性があります。
会社に安全配慮義務違反がある場合には、労災保険ではカバーできない損害について請求することが可能なので、まずは弁護士に相談してみてください。

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