漁業における労災について‐労災に強い弁護士が解説‐
目次
・漁業の労災事故状況
・漁業の労災事故の特徴・要因
・よく見られる事故類型
・実際の事故解決例
・労災申請の流れ
・後遺障害が残ってしまった場合に当事務所でできること
・漁業における労災事故と損害賠償請求について
・早めの相談・依頼で安心を
漁業の労災事故状況
漁業においても、他の業種業界と同じく、業務中の事故は起きるものであり、労災事故として取り扱われます。
ただ、漁業の労災事故には漁業特有の要因や特徴があり、もしもの災害に遭わないために、また遭ってしまった災害の今後の対応のためにも、これらを知っておくことは重要です。
漁業の労災事故の特徴・要因
漁業での事故と聞いてイメージされるのは、①漁船上での作業中の事故(漁労事故)と、②漁船が転覆するなどして人が海中に転落してしまう事故(船舶事故)だと思います。
数としては、①漁船上での事故の方が多いですが、②船舶事故は死亡という重大な結果に繋がりやすいことから厳重な警戒が必要です。
環境要因
・悪天候(荒天・突風・高波・低水温)による漁船転覆、漁船上での事故
・視界不良による船舶衝突・船舶からの転落
・氷結・凍結デッキでの転倒 など
何よりも重大災害が発生する危険性がある中での航行や作業は控えるべきで、悪天候のため、安全上控えるべきだったにもかかわらず、無理な出航のために死亡・負傷事故が発生したならば、雇用主には安全配慮義務違反の責任が認められ得ます。
作業・設備起因
・網・ロープ・巻上機による巻き込み
・はしご・船縁からの落下
・薬品・燃料の取り扱い、酸欠・一酸化炭素中毒 など
船舶の機器の故障、安全装置の不備はもちろん、雇用主が危険な作業方法を指示していた又は黙認していた場合にも、安全配慮義務違反の責任が認められ得ます。
人的要因
・長時間労働・睡眠不足・単独作業
・危険な場所、危険な方法による作業
・ライフジャケット未着用・不適合 など
よく見られる事故類型
例1 スケトウダラ漁で帰港途中の漁船が転覆し、乗組員3名が行方不明となった。
事故当日は、低気圧の接近により風と波が強くなることが予想されたにもかかわらず、漁を中止にせず、予定より2時間早めただけで、出港したことが一番の原因である。また、乗組員は救命胴衣(ライフジャケット)を着用しないまま作業を行っていたようであり、もしこの着用があれな救命できた可能性もあった。
例2 沖合底びき網漁の操業中、先に取り込んだ浮きロープを順次海に戻しながら船尾方に移動していた際、甲板上に残っていた浮きロープをまたいでいたため、網取機が起動して浮きロープの巻取りが始まり、浮きロープが張ったことで右足が持ち上がり、巻取りが継続されて浮きロープと共に舷外に引っ張られ、ブルワーク上縁を越えて落水し、溺水した
例3 揚網作業中、甲板員が、巻取クレーンの直下で揚収した網の整理をしていた際、揚網中に塊状になった網が巻取クレーンから甲板員の頭上に落下したため、網が甲板員の頭部を強打した。
実際の事故解決例
当事務所で取り扱った事案の一例です。
詳細は「漁船上で船から海へ転落するのを避けようと、咄嗟に船体を掴んだ手がベルトコンベアのチェーンに巻き込まれてしまい負傷、障害等級10級の認定、勤務先から約500万円の賠償金を得た例」をご覧ください。
事故内容
依頼者(50代男性)は、ホタテ漁の漁船で乗組員として稼働していましたが、ホタテ貝の選別作業中に船がグラリと揺れたため、海へ落水するのを避けようと咄嗟に船体を掴んだところ、それがベルトコンベアのチェーンのカバーであり、カバー内部のチェーンに手が巻き込まれてしまいました。
結果として、手指の骨折などの負傷を負い治療を続けたものの、最終的には「1手の母指以外の2の手指の用を廃したもの」として、第10級の障害等級認定を労基署から受けました。
解決結果
事故の原因は、落水の危険性のある場所で依頼者が作業していた点にあるのですが、依頼者がそこで作業していることは船長(依頼者の雇い主)は把握しており、安全作業指示に問題があったものでした。
しかし、雇い主は自身の責任を否定しており、当方からの損害賠償請求に対しては、代理人弁護士を立てた上で、責任や損害額について争ってきました。
最終的に雇い主側は責任があること自体は認めましたが、損害額や依頼者の落度(過失相殺)についての相互の譲歩の結果、任意示談が成立しました。
依頼者は、労災保険からの給付(約1200万円)の他に、雇い主から約500万円の賠償金を得ました。
労災申請の流れ
漁業従事中に事故に遭って怪我をしたり、ご家族が亡くなったりした場合、速やかに労災保険による治療や補償を受けられるべく、雇用主の方で手続を行ってくれることが通常です。(または雇用主の所属する漁協にて手続を代行してくれる場合も多いです。)
しかし、何らかの理由で、雇用主側から手続がなされないということもあり得ますので、その場合、被災者(ご遺族)自らが積極的に申請のために動かなければなりません。
労災保険の申請と給付については、詳しく解説したこちらの記事をご覧ください。
労災保険の申請と給付【弁護士が解説】
後遺障害が残ってしまった場合に当事務所でできること
漁業従事中の労災事故で負傷し、治療を続けたものの後遺障害(手足や指の欠損、関節の可動域制限、痛み・しびれ等の神経症状など)が残ってしまった場合、労働基準監督署に障害等級を認定してもらうために申請をします。
適切な障害等級認定を受けるためには、適切な準備が必要です。
漫然と手続をしたために、本来よりも低い障害等級で評価されてしまっては、大きな不利益を受けてしまいます。
適正な障害等級認定のためのサポートについては、詳しく解説したこちらの記事をご覧ください。
労災保険の障害申請サポート ~適正な障害等級認定のために~
漁業における労災事故と損害賠償請求について
勤務先(雇用主)は労働者が就業するにあたって、その生命、身体、健康の安全に配慮する義務を負っています(労働契約法5条)。
例えば、災害の発生が懸念される荒天の中、出航したために発生した船舶の転覆、海中落下などの船舶事故が起こった場合、雇用主には安全配慮義務違反があるとして、損害賠償責任が認められることが多いと考えてよいです。
また、漁船上の機器の故障や安全装置の未設置による漁労事故、作業指示の不適切、安全管理の不十分さによる漁労事故についても、雇用主の責任が認められる可能性が高いです。
労災保険からは、治療費や休業補償などの給付はありますが、慰謝料は一切ありませんし、休業補償も給料全額までは補償されません。さらに後遺障害や死亡事故となった場合、将来得られたであろう稼働収入も全部はカバーされません
したがって、漁業労災の労働者ご本人やご遺族は、労災保険からの補償給付の他に、勤務先(雇用主)に対して、慰謝料や逸失利益等、労災保険ではカバーされない損害を賠償請求することによって確保することはとても大切なことです。
具体的に損害賠償請求として、具体的にどのような内容、金額の請求が可能なのかの目安については、次の記事をご覧ください。
会社に対して損害賠償請求をお考えの方へ
早めの相談・依頼で安心を
ここまで漁業と労災保険、損害賠償請求について、なるべく平易にご説明して参りましたが、やはり労災認定が実際にどのようになるのか、勤務先(雇用主)へはどのように請求すればよいのか等、法律の専門家ではないご本人、ご家族には難しい面も多々あると思います。
自分の主張は法律的に正しいのか、証拠資料の裏付は十分なのか、損害賠償の基準(相場)は合っているのか、他に請求できるものがあるのかないのか、裁判例などの実務上の取り扱いに沿っているのか否か・・・と不安点をあげればキリがないと思います。
そこで、経験豊富な弁護士に相談・依頼して、労災認定のサポートをしてもらうという選択肢があります。
また、勤務先会社に対する損害賠償請求についても、弁護士に依頼して、その可否の検討、賠償請求手続を行ってもらうという選択肢があります。
弁護士は損害賠償請求が可能と判断した場合、通常、いきなり裁判を起こすのではなく、会社に通知書等の書面で損害賠償の請求をして示談交渉を行います。
残念ながら話し合いで解決できない場合(示談解決できない場合)には、その先のステップとして裁判解決を目指すことになります。
そのため、裁判まで行かずに示談交渉で最終解決に至る割合はかなり高いのです。
弁護士は、労災の賠償についても熟知しており、複雑・煩雑なやりとり、具体的な証拠の収集、事実認定を経た上での法的主張は日常的に行う業務としてよくなれていますから、ご依頼いただくことでこれらを一挙に担い、有利に、迅速に進めることができます。
労災事故に遭われて、お悩みの方はぜひ一度、ご相談なさってみてください。
ご相談は、電話でもメールでもLINEでも可能で、いずれも無料です。ご相談はこちらです。














