転倒・骨折事故後に会社の労災隠しが相まって死亡、会社から賠償金を得た例

事故内容

依頼者母(70代女性)は公共施設でパート勤務をしていましたが、公休日に上司の指示で無給出勤をしていたところ、休憩中に施設内階段で転倒し、足を骨折してしまいました。

直ちに上司には事故を報告しましたが、上司は自身の指示で無給出勤させていたことが発覚することを恐れてか(上司本人は否定していましたが、それ以外の動機は考えられません)、上司は骨折した依頼者母を人目につかないよう物陰にしばらく隠し、さらに依頼者母に労災にしたら辞めさせると言い含めて、依頼者母をタクシーに乗せて帰しました。労災隠しです。

依頼者母は、自費で病院を受診しましたが、金銭面(医療費、休業補償)や家族の介護等の問題から、病院から勧められた入院はせず、自宅に帰り、療養していました。

しかし、約2週間後、自宅で療養していた依頼者母の容体は急変し、救急搬送されたものの、搬送先で亡くなりました。死因は肺塞栓でした。

※肺塞栓:いわゆるエコノミークラス症候群。骨折等により寝たままの安静期間を経たことにより発症しやすい。

依頼の経緯

依頼者母が亡くなった後、会社自体にも労災事故事実が伝わり、速やかに労基署への報告等の手続はなされました。労基署においては死亡結果についてまでの補償給付が出るか否かにつき、かなり長く調査がなされていましたが、事故の約1年後、ようやく死亡結果についてまでの補償決定がなされました。

依頼者としては、労災発覚後の会社の対応には一定の誠意を感じてはいました。

しかし、労災隠しがなければ母は死亡までしなかったのではないかとも考えており、その点の明確な謝罪を求めていたことや、会社から提示された補償金額(数百万円)にも疑問を感じていたことから、当事務所にご相談、ご依頼をされました。

弁護活動

死亡という結果についての損害賠償を求めるためには、労災事故による怪我(骨折)と死亡との間の因果関係が必要であることはもちろんです。骨折と死亡との因果関係は労基署が認めたとはいえ、仮に裁判での争いになった場合には万全とまではいえないというのが、ご相談を受けた私の見立てでした。

また、死亡と会社の有責行為との間にも因果関係が必要です。骨折の原因となった転倒事故自体には会社の責任はないものと思われたので、(会社の有責行為である)上司の労災隠しと死亡との間に因果関係が認められるかが問題と思われました。労災保険での入院治療を受けていれば、肺塞栓とならなかった、または肺塞栓となっても救命可能であったといえるか、が問題というわけです。

以上のような因果関係の点について、かなり詳細に論じた形の通知書を作成して、会社に対して死亡を前提とした損害賠償と謝罪の請求をしました。そうしたところ、会社にも代理人弁護士がつき、交渉となりました。

幸い、会社は死亡による損害を賠償する意向を示し、任意和解による解決とすることができました。

結果

労災保険からの給付(定額特別支給金300万円と遺族年金)とは別に会社が約3000万円を支払うという形で和解となりました。また、会社からは明確な謝罪もいただけましたので、非常によい解決となったものと思われます。

労災事故に遭われて、お悩みの方はぜひ一度、ご相談なさってみてください。
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