右手指が機器に挟まれ負傷、障害等級非該当が労災審査請求にて14級認定、その後に会社から賠償金を得た例

事故内容

依頼者(30代男性)は金属製品加工業の会社に勤めていましたが、ステンレス鋼板を加工する工程で右手指が機器に挟まれてしまい、右手を負傷しました。

依頼者は、業務過程で鋼板と加工機材の間に右手を挟んでしまったのですが、その原因は会社が部材の節約のために、危険であるにもかかわらず、同じ部材を繰り返し使用させていたことにありました。

とはいえ、労災事故報告書等にはそのような本当の原因は記載されていませんでした。

依頼者は約半年間の治療を続けましたが、右手に痛みやしびれが残った状態で症状固定となりました。

依頼の経緯

会社からは、労災事故は依頼者の不注意によるものであるとの扱いをされており、症状固定後は早く業務に復帰するように言われており、身体の状況に配慮する様子も感じられませんでした。

依頼者としては、右手の状態からすると、以前の業務をこなすのは難しいと感じており、会社の姿勢にも不信感を抱いたため、当事務所にご相談、ご依頼をされました。

当初の障害等級認定と不服申立て、原処分取消し

依頼者は、症状固定に伴って主治医に作成してもらった障害の診断書を管轄労基署に提出し、障害申請をしていましたが、労基署は依頼者の障害(痛み、しびれ等)は「ほとんど常時」感じるものではないという理由で、疼痛等の神経症状(14級の9)の障害に該当しないとの処分をしました。

これには、依頼者は不満であったため、労働局(労基署の所属する行政庁)に審査請求(不服申立てのこと)をすることにしました。

不服申立てに際しては、原処分(管轄労基署の下した処分)の詳細理由等が記載された資料等を「保有個人情報開示請求」により取得し、治療した病院のカルテ等も取り付けて、これをよく検討し、かつ依頼者の症状の詳細や労務への影響についての詳細な陳述書を作成しました。

審査請求手続では審査官が審査請求人と面接し、事情聴取が行われます。

これは通常、労働局(北海道では札幌市に所在)で行われますが、依頼者の居住地は北海道内の地方都市であったため、審査官が同市に出張して面談を行うこととなり、依頼者の代理人である私(弁護士)も同市に出張の上、依頼者と共に面談に臨みました。

審査請求では、結論が出るまで相当長期間を要します。本件でも申立てから結果が出るまでに半年以上かかりました。

もっとも、結果は上首尾で、「原処分を取り消す」となり、障害等級(14級の9)が認められることになりました。

障害等級が認められるか否かで、労災保険からの障害一時金の給付が出るかどうかの違いもありますが、何よりもその後の勤務先会社に対する損害賠償請求額が格段に変わるのです。2~3倍以上の差が出ることが多いのです。

会社への賠償請求

審査請求の結果、障害等級も認められましたので、勤務先会社に対して、事故の原因は会社の安全配慮義務違反(危険な作業指示)にあるとして、損害賠償請求を行いました。損害賠償の内容は、通院慰謝料、休業損害、後遺障害による逸失利益、後遺障害慰謝料等です。

そうしたところ、会社にも代理人弁護士がつき、交渉となりました。

会社は、依頼者にも過失があると主張してきましたが、当方はそれはあり得ない旨を強く主張し、より詳細な事実主張を行いました。

結果、依頼者の過失はゼロとすることを前提として、賠償額の折り合いもついて示談(任意和解)による解決とすることができました。

結果

これまでの労災保険からの給付(約170万円)とは別に職場が約370万円を支払うという形で和解となりました。

この和解額は、もしも訴訟をして完勝したと仮定した場合の賠償額とほとんど同等であり、依頼者にとって、とてもよい解決となったものと思われます。

本件については、審査請求(不服申立て)によって、障害等級を勝ち取ったことが最大のポイントであったと思われます。

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