過度の長時間労働のために精神疾患(うつ病)を発症、自死してしまい、労災認定、会社から賠償金を得た例
出来事内容
依頼者の夫(40代男性)は、大手企業の責任ある立場で精力的に勤務していましたが、慢性的な人員不足と業務量の多さから過度な長時間労働が常態となっていました。長時間勤務や連続勤務などが続いた結果、依頼者夫はある日、突発的に自死してしまいました。ただ、この出来事前に精神面の不調で病院を受診していたことはなく、そのため、うつ病等の診断を受けていたこともありませんでした。
依頼の経緯
依頼者夫の死亡については、過度の長時間労働等が原因でうつ病を発症し自死に至ったものとして、管轄の労働基準監督署による労災認定がなされました。精神疾患の労災認定には長期間を要するのが常であり、本件でも労基署による認定調査には半年以上を要しました。
長時間労働による精神疾患の発症の場合、そのような長時間労働をさせていた勤務先会社の安全配慮義務違反による責任が認められることが多いのですが、本件では、労災認定された後も勤務先会社からは特に何らかの補償申し出などもありませんでした。
そのため、疑問に思った依頼者は、当事務所にご相談、ご依頼をされました。
弁護活動
依頼を受けた後、当方では損害賠償額の積算をするための各種資料を労基署(労働局)等から取り付け(保有個人情報の開示請求等)、その後に会社に対する損害賠償請求をしました(書面による請求通知)。
損害賠償請求の理由、つまり会社の安全配慮義務違反の内容は、次のようなものとなります。
すなわち、勤務先会社(使用者)は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務(安全配慮義務)を負っており、この義務に違反した結果、労働者に過重労働による精神疾患が発症したのであれば、会社はその発症による損害賠償責任を負うということです。
このあたりについて詳しくは当サイト内の【脳・心臓疾患になった方やご家族へ】労災申請と損害賠償についてというコラム記事で詳しく解説していますので、ご参照いただければと思います。
【脳・心臓疾患になった方やご家族へ】労災申請と損害賠償について
当方からの請求を受けた勤務先会社は、代理人弁護士を立てて交渉に臨みましたが、基本的なスタンスとして会社が損害賠償責任を負うことは認めていました。
長時間労働等による精神疾患の労災認定を受けている場合、会社の方で責任を否定するのは、やはりなかなか難しいという実情があるのです。
ただし、依頼者のご意向として、できるだけ高額の金銭賠償を得たいという考えはありませんでした。
依頼者ご本人のお考えとしては、すべてを会社の責任とすることによって夫が亡くなってしまったことのわだかまりが解消されるわけでもなく、他方で会社にも責任があることは認めてほしいとの思いをお持ちであったことから、会社が責任を認め、一定額の支払をしてもらうことで、この件の一区切りをつけたいというお考えであったのです。
そのようなことから、交渉においては、当方からは(本来の賠償額からすれば)大幅に減額した解決額の提示を会社側にしており、会社側はすんなりと当方提示を受け入れる意向を示しました。
そのため、比較的スムーズに任意和解(示談)解決に至ることができました。
結果
依頼者は、労災保険からの各給付の他に、会社から約5000万円の支払を受けることができました。法律論だけではない諸々の事情を考慮した結果ですが、気持ちの納得という意味でも依頼者には良い解決になったと思われます。
労災事故に遭われて、お悩みの方はぜひ一度、ご相談なさってみてください。
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