職場内の交通事故でPTSDを発症、非器質性精神障害で後遺障害12級、1000万円超の賠償金を得た例

事故内容

依頼者(30代男性)は自動車関係の職場に勤務していましたが、業務中に同僚が自動車の操作を誤り、依頼者は膝等を負傷する事故被害に遭いました。

身体的負傷の治療は9か月ほど続けましたが、膝の神経症状が残り、これについては自賠責保険にて14級の後遺障害が認定され、その後、加害者の保険会社と示談に至りました。

しかし、その後も、事故のショック(事故状況が「危うく死ぬ、重傷を負うような出来事」ほどの態様でした)で、依頼者は精神面に抑うつ症状を来してしまい、これはなかなか回復しませんでした。これは後に心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されました。

依頼の経緯

依頼者は身体的負傷の症状固定以降、5年間以上も精神症状に苦しみ、労災保険による治療(精神科)を受けてきました。その間、労災保険からの休業補償給付も継続していました。

会社から特に何の補償の申し出もない状況であり、現状に疑問をもった依頼者は当事務所にご相談、ご依頼をされました。

弁護活動

依頼者のお話を伺い、まずは現在の病院で症状固定と主治医が判断するまで治療を継続してもらいました。

また労働局(労基署が所属する官庁)から、膨大な労災関係書類(精神疾患の業務起因性判断のための調査資料一式、障害等級認定のための調査資料一式など)を取り寄せ、事故による身体的負傷の関係の賠償関係書類(当時依頼していた弁護士からの取寄せ資料)をも取り寄せました。

そうした中、依頼者は症状固定となり、労基署に障害給付請求(障害等級申請のこと)をした結果、12級の12の等級認定となりました。非器質性精神障害(9級、12級、14級)で12級というのは相当に重い等級です。

等級も確定したので、勤務先会社に損害賠償請求を行いました。

業務中の従業員による加害事故ですから、会社は使用者としての責任(民法715条)があり、また安全配慮義務違反もあると判断されました。

損害賠償の内容は、通院慰謝料、休業損害、後遺障害による逸失利益、後遺障害慰謝料等で、1500万円超の請求となりました。

そうしたところ、職場にも代理人弁護士がつき、交渉となりました。

会社は、身体的負傷の示談で解決済みである、時効消滅している、症状と事故との因果関係がない、素因減額をすべき、等々いろいろなことを主張してきました。

しかし、いずれも詳細に反論した結果、会社は完全に責任を認めるに至り、任意和解による解決とすることができました。

結果

これまでの労災保険からの給付(障害補償、休業補償等で1000万円以上)とは別に会社が約1100万円を支払うという形で和解となりました。

身体的負傷の示談は相当以前に終わってしまっていたこと、最終的に残った精神症状と事故の関係はいろいろと難しい争点もあったことも考えますと、非常に良い解決となったと思われます。

また、精神疾患の場合には、会社に適切に責任を取ってもらったという形で、被災者に及ぼす納得感はとても大きいものがあります。

この件の依頼者にとっても、まさにそうでした。事件処理を進めていく中で、依頼者の精神状態はずいぶん快方に向かっていったなと、接していた弁護士として、私は思いました。

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