障害者施設、重度訪問介護における労災について
目次
障害者施設、重度訪問介護等での労災の特徴
障害者施設等での典型的な労災事故類型
労災申請の流れ
「労災隠し」について
後遺障害が残ってしまった場合に当事務所でできること
障害者施設等での労災事故と会社・法人(事業主)の責任
障害者施設等での労災事故の解決事例
泣き寝入りしない
早めの相談・依頼で安心を
障害者施設、重度訪問介護等での労災の特徴
我が国には、主に知的・精神障がい者の方々が生活するために入居する施設があります。
そのような施設では職員が常駐し、入居者の心身の状況に応じて、職員が生活面の介護を行うのが一般です。
また、重複障害といって、知的障害と身体障害など複数の障害を併せ持った方への介護では、ご自宅への重度訪問介護も広く行われています。
「ともに生きる」地域社会の実現のために欠かせない施設・業務であり、勤務する職員の仕事は非常に社会的意義のあるものですが、その裏側では労働災害が問題となっています。
この記事では、その実態と具体的なケース、そして、労災被害に遭ってしまった場合、どうすべきかについて解説します。
障害者施設等での典型的な労災事故類型
障害者施設や重度訪問介護業務等で多い労災事故としては、入所者、被介護者等からの暴力被害事故、動作の反動や無理な動作による腰痛災害、転倒災害があります。
暴力被害事故
障害者施設の入居者の中には、抑制が効きにくい、パニックになってしまう等の特性を持った方もいて、突発的に職員に暴力を振るってしまうこともあります。
また、重度訪問介護での移乗・入浴等介助中に、ご本人が不穏となって介助者(職員)を突き飛ばしてしまう等の暴力事故もあります。
知的・精神障がい者の方には、身体は大きく力も強い方もいらっしゃいますから、突発的な暴力により、職員が重い怪我を負ってしまうこともあります。
腰痛災害、転倒災害
重度訪問介護での移乗介助や入浴介助中に、腰に無理な力がかかって、ヘルニアなど腰痛災害が生じることもあります。
また、入居者や介助対象者が転びそうになるのを防ぐため自身が下敷きになってしまうなど、ご本人への危機防止のため、職員が転倒等の災害に遭ってしまうこともあります。
労災申請の流れ
このような障害者施設、重度訪問介護等での事故は、もちろん業務中の事故ですから、労災事故として労災保険扱いでの治療が受けられ、休業中は休業補償給付、障害が残ったなら障害補償給付が受けられます。
雇用主の方で手続を行ってくれることが通常ですが、何らかの理由で、雇用主側から手続がなされないということもあり得ますので、その場合、被災者自らが積極的に申請のために動かなければなりません。
労災保険の申請と給付については、詳しく解説したこちらの記事をご覧ください。
労災保険の申請と給付【弁護士が解説】
「労災隠し」について
しかしながら、障害者施設、重度訪問介護事業を運営する会社・法人の中には、規模も小さく、経営者に遵法精神に欠けるところも見られるのも事実です。
そのような施設では、業務中の事故にもかかわらず、労災ではないとか、健康保険で治療するようにとか、違法な対応をするところもあります。
もしも、このような労災隠しにあった場合には、すぐにでも労基署や弁護士に相談してください。
労災隠しをされるままに放置すると、ご自身に重大な不利益が降りかかりかねません。
詳しくは「労災隠し」への対処方法をご参照ください。
後遺障害が残ってしまった場合に当事務所でできること
障害者施設、重度訪問介護等の業務従事中の労災事故で負傷し、治療を続けたものの後遺障害(関節の可動域制限、痛み・しびれ等の神経症状など)が残ってしまった場合、労働基準監督署に障害等級を認定してもらうために申請をします。
適切な障害等級認定を受けるためには、適切な準備が必要です。
漫然と手続をしたために、本来よりも低い障害等級で評価されてしまっては、大きな不利益を受けてしまいます。
適正な障害等級認定のためのサポートについては、詳しく解説したこちらの記事をご覧ください。
労災保険の障害申請サポート ~適正な障害等級認定のために~
障害者施設等での労災事故と会社・法人(事業主)の責任
労災保険給付の不十分性
労災保険からの給付には、慰謝料(入・通院慰謝料、後遺障害慰謝料)はなく、休業補償も事故前収入と同じだけ(100%)は得られない、後遺障害による将来の収入減少への補償が不十分である、といった不十分点があります。
もしも、その労災事故の発生に会社・法人の安全配慮義務違反等があるならば、会社・法人に対して損害賠償請求をすることによって、労災保険給付だけでは不十分な点の賠償(補償)を受けられます。
安全配慮義務違反による損害賠償請求
勤務先(雇用主)は労働者が就業するにあたって、その生命、身体、健康の安全に配慮する義務を負っています(労働契約法5条)。
例えば、安全性の点で本来は複数人で対応しなければならなかった業務を人員不足等の理由で単独で行った結果、災害が発生した場合、事業主には安全配慮義務違反があるとして、損害賠償責任が認められることが多いと考えてよいです。
また、本来使用すべき機器の故障や、予算不足のために修理できていなかった等のために使えなかったために事故が発生したとか、作業指示の不適切、安全管理の不十分さによる事故についても、事業主の責任が認められる可能性が高いです。
暴力事故の場合の詳細
入居者等からの暴力事故の場合はどうでしょうか。
まず、安全配慮義務に関する一般論として、「雇用主は、雇用契約の附随義務として、従業員の生命、身体、健康の安全に配慮する義務を負っている。具体的には、入居者の認知症の状態や、障がい内容・性質等から、職員に対する危害が予想される場合には、同危害を防止する十分な物的・人的措置を講じ、危害の発生を防止する義務がある。」ということができます。
そうすると、ポイントはその暴力事故について、①その入居者等の暴力が予想できたか、②予想できたのならば暴力被害を防ぐ手立て(対策)を会社・法人は採っていたか、ということになります。
①予想が可能であり、
②十分な対策が採れていなかったならば、
会社・法人の安全配慮義務違反が肯定され、会社の責任が認められるでしょう。
さらに、①・②について詳しく述べますと、
「①その入居者等の暴力が予想できたか」についての重要な立証手段(証拠資料)は、その入居者等のプロフィール資料や、日々の介護記録等がメインとなります。
介護記録には、その入居者等がこれまで職員や他入居者に暴力等を振るったことがあれば、その出来事が記載されていますし、プロフィール資料には介護にあたって気を付けるべきこととして、暴力傾向があれば記載されているのが普通です。
ところが、施設においては、暴力事故があった後、それらの資料を隠してしまうことがあります。
もちろん、施設の責任を問われないようにするためでしょう。
信じられないかもしれませんが、そのような隠滅行為を行う施設も本当にあるのです。
そのため、被害に遭われた方は、万一の場合に備えて、何らかの方法で上記の資料の存在・内容を確保しておいた方がよいかもしれません。(もちろん、窃盗等の違法行為をしてはいけませんので、念のため指摘しておきます。)
「②暴力被害を防ぐ手立て(対策)」については、その入居者等の暴力傾向の程度等にもよりますが、介護には複数人で対応できる人的体制や、それに準ずるような物的体制が必要と判断されるでしょう。
会社・法人は、②に関して、マニュアルに基づく教育をしていた、介護保険法、障害者総合支援法等の法令に基づく基準に合致する人員体制をとっていた等の反論をしますが、そのような一般的な措置では、責任を否定することは難しいでしょう(裁判所の判断を念頭に置いて述べています)。
損害賠償の内容の詳細について
具体的に損害賠償請求として、具体的にどのような内容、金額の請求が可能なのかの目安については、次の記事をご覧ください。
会社に対して損害賠償請求をお考えの方へ
障害者施設等での労災事故の解決事例
当事務所で取り扱った事案の一例です。
詳細は「障害者施設で入所者からの暴力を受けて負傷、労災審査請求(障害等級不服申立て)で12級の認定を得て、会社への訴訟で1000万円強の賠償金を得た例」をご覧ください。
事故内容
依頼者(30代女性)は障害者生活施設で生活支援員として勤務していましたが、些細なことで不穏になった暴力的傾向のある入所者から、叩く、引っ掻く、切り付ける、咬みつくなどの激しい暴力を受けてしまい、顔、頭、腕、手などを負傷しました。
中でも咬みつかれた手指の怪我がもっとも重く、神経損傷のために痛み、しびれなどの後遺障害が残ってしまいました。
当初、依頼者は労基署から、手指の神経症状について14級の9の認定を受けていましたが、当事務所の方でご依頼を受けて、不服申立て(労災審査請求)をしたところ、首尾よく、より上位の神経症状(12級の12)が認定されました。
会社への賠償請求
12級の障害等級となったため、その後、勤務先に対して、損害賠償請求を行いました。
入所者の暴力行為は明らかに依頼者への不法行為であり、暴力的傾向のある入所者を世話する従業員への安全対策も不十分で、勤務先(社会福祉法人)の責任があると思われるのに、事故後、勤務先は依頼者が悪いかのような態度を取り続けていました。
勤務先の責任としては、暴力などの危険な傾向を持つ入所者であることをわかっていながら、生活支援員一人で、当該暴力行為入所者を含めた多数の入所者の世話をする勤務体制にしていたことが、雇用主としての安全配慮義務に違反しているということです。
しかし、勤務先は、責任を一切認めない対応に終始したことから、裁判所への訴訟で解決を図ることになりました。
双方の主張・立証の結果、裁判所からは当方の全面勝訴といってよい和解案が示されました。勤務先の責任を認めることはもちろん、依頼者の過失は一切ないという内容でした。
勤務先も裁判所和解案を受け入れたため、和解成立となりました。
結果
これまでの労災保険からの給付(約150万円)とは別に勤務先が1000万円強を支払うという形で和解となりました。当方にとっては、全面勝訴といってよい内容であり大変満足いく結果となりました。
当事務所では、多数の労災案件を取り扱っており、他にも多くの障害者施設等での労災事故の解決事例があります。
業種別・介護・医療・社会福祉の解決事例ページをご参照していただければ幸いです。
泣き寝入りしない
これまで、介護・社会福祉業界では、入居者等からの暴力被害に遭ったからといって、労災保険からの給付を受ける以上に、会社・法人への責任を追及しようというのは、あまり一般的ではなかったかもしれません。
しかし、それでは職員の被害はどのように解消されればいいのでしょうか。泣き寝入りを強いることは正義でしょうか。
そうではないでしょう。これまで泣き寝入りをせざるを得なかったとすれば、これまでがおかしかったのです。
決して簡単ではありませんが、会社・法人から正当な賠償を受けることは不可能ではありません。
安易な泣き寝入りはお勧めできません。
早めの相談・依頼で安心を
ここまで障害者施設・重度訪問介護業務と労災保険、損害賠償請求について、なるべく平易にご説明して参りましたが、やはり労災認定が実際にどのようになるのか、勤務先(雇用主)へはどのように請求すればよいのか等、法律の専門家ではないご本人、ご家族には難しい面も多々あると思います。
自分の主張は法律的に正しいのか、証拠資料の裏付は十分なのか、損害賠償の基準(相場)は合っているのか、他に請求できるものがあるのかないのか、裁判例などの実務上の取り扱いに沿っているのか否か・・・と不安点をあげればキリがないと思います。
そこで、経験豊富な弁護士に相談・依頼して、労災認定のサポートをしてもらうという選択肢があります。
また、勤務先会社に対する損害賠償請求についても、弁護士に依頼して、その可否の検討、賠償請求手続を行ってもらうという選択肢があります。
弁護士は損害賠償請求が可能と判断した場合、通常、いきなり裁判を起こすのではなく、会社に通知書等の書面で損害賠償の請求をして示談交渉を行います。
残念ながら話し合いで解決できない場合(示談解決できない場合)には、その先のステップとして裁判解決を目指すことになります。
そのため、裁判まで行かずに示談交渉で最終解決に至る割合はかなり高いのです。
弁護士は、労災の賠償についても熟知しており、複雑・煩雑なやりとり、具体的な証拠の収集、事実認定を経た上での法的主張は日常的に行う業務としてよくなれていますから、ご依頼いただくことでこれらを一挙に担い、有利に、迅速に進めることができます。
労災事故に遭われて、お悩みの方はぜひ一度、ご相談なさってみてください。
ご相談は、電話でもメールでもLINEでも可能で、いずれも無料です。ご相談はこちらです。















